リスクを背負う完熟いちじく農家の現状

木の上で完熟するまで待ついちじく。それは、農家にとって理想であると同時に、大きなリスクを背負うことでもあります。

いちじくは、完熟に近づくにつれて、果肉がどんどん柔らかくなっていきます。これは美味しさが増している証拠なのですが、同時に、非常に傷みやすくなるということでもあります。

私たち藤井農園では、毎日畑に出て、ひとつひとつの実の状態を確認しながら、収穫のタイミングを見極めています。「今日収穫するか、もう一日待つか」。この判断は、簡単なようでいて、実はとても難しいものです。

完熟いちじくの収穫は、真夜中から始まります。

深夜12時。辺りはまだ暗く、静まり返った畑の中で、ヘッドライトを頼りに一人で収穫を始めます。スタッフが合流するのは、早朝3時頃。それまでの3時間は、一人で黙々と実を摘み続けます。

なぜ、こんな時間から収穫するのか。理由は二つあります。

一つは、完熟のタイミングを逃さないためです。完熟いちじくは、その日の朝に出荷するために、夜のうちに収穫しておく必要があります。朝の収穫では、出荷までの時間が足りないのです。

もう一つは、夏の暑さを避けるためです。気温が上がった日中に収穫すると、デリケートな完熟の実が傷みやすくなります。気温が低い深夜から早朝にかけての時間帯に収穫することで、実への負担を最小限に抑えることができるのです。

深夜の畑に一人で立ち、黙々と実を摘み続ける。それは、決して楽な作業ではありません。それでも、翌朝お客様のもとへ届けるために、その日も畑に向かいます。

「あと一日待てば、もっと甘くなる」。そう判断して、木に実を残しておくことがあります。ですが、いちじくという果物は本当にデリケートです。その夜、もしゲリラ豪雨のような悪天候に見舞われてしまうと、残しておいた実のほとんどが傷んでしまい、商品として出荷できなくなってしまうのです。すべてが廃棄になってしまうことも、決して珍しいことではありません。

深夜に収穫を始めるその日も、空模様と天気予報を何度も確認しながら、「今夜は大丈夫か」と心の中で問いかけています。完熟を待つということは、天候というコントロールできないものと、毎晩向き合い続けることでもあるのです。

早どりをすれば、こうしたロスは大きく減らせます。収穫適期になったらすぐに収穫してしまえば、天候に左右されるリスクはぐっと小さくなります。農家として、ロスを避けたい、減らしたいと思うのは、ごく自然な心理です。むしろ、経営という観点から見れば、早どりは合理的な判断だとも言えるでしょう。深夜から収穫を始める必要もなく、スタッフへの負担も、ずっと少なくて済みます。

それでも私たち藤井農園は、木の上で完熟するまで待つことを選んでいます。

深夜12時に畑に立ち、暗闇の中でヘッドライトを頼りに実を摘む。天候に左右され、一晩ですべてが無駄になるリスクを承知の上で、それでも完熟を待つ。なぜそこまでするのか。次回は、その理由についてお話ししたいと思います。

藤井農園

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です