木の上で完熟するまで待ついちじく。それは、いちじく農家にとって、いちばんの理想です。

ですが、皆さんが普段スーパーや直売所で目にするいちじくの多くは、実は「完熟前」の状態で収穫されたものだということを、ご存知でしょうか。
なぜ早どりをするのか
理由は、鮮度を保つためです。
完熟に近づいたいちじくは、果肉が驚くほど柔らかくなります。それは美味しさの証である一方で、輸送や保管の中で傷みやすいということでもあります。
一般的な市場出荷や、スーパーなどの既存の流通ルートに乗せる場合、店頭に並ぶまでの日持ちを考えなければなりません。そのため、多くの農家は、完熟する前の段階でいちじくを収穫せざるを得ないのが現実です。
たった2日で、味がまったく変わる
いちじくという果物は、想像以上に成熟のスピードが速い果物です。

私たち藤井農園でも、「もう少し置いたら完熟になる」というタイミングから、実際にあと2日ほど樹に置いておくことがあります。たったの2日です。けれど、その2日で甘さはまったくと言っていいほど変わります。
早どりの状態で収穫したいちじくは、まだ甘みが十分に乗っておらず、青臭さが残っています。この青臭さこそが、「いちじくが苦手」と感じる方が多い、大きな原因のひとつではないかと、私たちは考えています。
一方で、木の上でしっかりと完熟まで育ったいちじくは、まったく違う表情を見せます。上品な甘さがあり、香りも豊かで、果肉は驚くほど瑞々しい。同じ品種、同じ畑で育ったいちじくとは思えないほど、味わいが変わるのです。

たった2日。けれど、その2日が、いちじくの「美味しい」と「美味しくない」を分けてしまう。それほどに、いちじくはデリケートで、繊細な果物なのです。
「いちじくは美味しくない」という誤解
店頭に並ぶ多くのいちじくは、この「完熟まであと一歩」のところで収穫されたものです。
それを口にした方が、「いちじくって、そんなに美味しいものじゃないんだな」と感じてしまう。青臭さを「これがいちじくの味」だと思い込み、いちじくを好きになる機会を逃してしまう。
そんな悪循環が、知らず知らずのうちに生まれているのではないかと、私たちは感じています。
もし「いちじくはあまり得意じゃない」と思ったことがある方がいらっしゃったら、それはもしかすると、いちじく本来の味ではなく、「完熟まであと一歩だった、いちじくの味」だったのかもしれません。
本当のいちじくの味は、もっと甘く、もっと香り高く、もっと瑞々しいものです。

次回は、完熟を待つということが、農家にとってどれほど大きな決断であり、リスクなのかについて、お話ししたいと思います。木の上で完熟を待つ2日間が、なぜそれほどの覚悟を必要とするのか。その理由をお伝えします。
藤井農園
